はじめに
「1級建築施工管理技士なんて、現場が落ち着いてから受ければいい」
もしそう考えているなら、少し立ち止まって考えてみてください。2024年の受検制度改正によって、1級建築施工管理技士への道筋は大きく変わりました。
19歳以上であれば第一次検定を受検できるようになり、若手技術者は早期に「1級建築施工管理技士補」を目指せる時代になりました。
そして第一次検定に合格すると「1級建築施工管理技士補」となり、監理技術者補佐として大型工事の現場経験を積めるようになりました。
一方で、長年現場で実務経験を積み上げてきた中堅・ベテラン技術者には、令和10年度(2028年度)までという重要なタイムリミットがあります。
経過措置期間が終了すると、旧制度による受検ルートは終了します。
つまり現在は、若手にとっては「最短で監理技術者を目指せる時代」ベテランにとっては「これまでの実務経験を活かせる最後のチャンス」なのです。
私は40年以上にわたり建設業界に関わってきました。生コンポンプ屋のアルバイトから始まり、建材営業、住宅資材配送、ゼネコン営業、そして総務・人事。
現場監督、職長、所長、役員、協力業者、採用担当者など、多くの立場の人たちを見てきました。
その中で確信していることがあります。1級建築施工管理技士に一発合格する人は、決して特別な天才ではありません。
むしろ、・勉強方法・時間の使い方・第二次検定対策の開始時期・会社の支援制度の活用方法、を知っている人です。
1級建築施工管理技士に一発合格する人の3つの習慣
今回は、実際に多くの合格者を見てきた経験から、「一発合格者に共通する3つの習慣」と「監理技術者を本気で育てる会社の特徴」を解説します。
習慣①教科書から始めない。「過去問から逆算する」
不合格を繰り返す人の多くは、最初に分厚い参考書を購入します。そして、1ページ目から順番に読もうとします。
しかし現場監督の現実を考えてください。朝礼。新規入場者教育。施工段取り打合せ。品質管理。安全管理。工程調整。写真整理。書類作成。施工管理アプリへの入力。
一日が終わる頃には脳も体力も限界です。その状態で参考書を開いても、数ページで眠くなるのが普通です。
一発合格する人は逆です。まず過去問を開きます。最初は解けなくて構いません。重要なのは、「何が出るのか」を知ることです。
過去問を見続けると、・毎年出るテーマ・頻出キーワード・ひっかけ問題のパターンが見えてきます。そこで初めてテキストを開くのです。
つまり、テキストは最初から読む本ではなく、「辞書」として使います。この方法なら勉強時間を大幅に短縮できます。
さらに第一次検定の段階から、「なぜその施工順序なのか」「なぜその数値なのか」を考える癖をつけてください。これが第二次検定の記述問題で大きな差になります。
習慣②「1時間の勉強」より「5分×12回」
現場で働く人にまとまった自由時間はありません。
だから合格者は、まとまった時間を探しません。代わりに、スキマ時間を回収します。
例えば、・出勤直前の現場駐車場での5分・昼休み終了前の5分・打合せ待ちの5分・帰宅後の5分・就寝前の5分…です。
1回5分でも、1日12回積み上げれば60分になります。しかも毎日続きます。これが大きいのです。
資格試験は短距離走ではありません。半年から1年続く長距離走です。重要なのは、「今日は何時間やったか」ではなく、「今日も勉強したか」です。
勉強を習慣化した人が最後に勝ちます。現代の受験生にはスマートフォンという強力な武器があります。過去問アプリを入れておけば、参考書を持ち歩く必要もありません。
合格者の多くは、スマホを開くたびにSNSを見るのではなく、問題を1問解いています。その積み重ねが合否を分けます。
習慣③『旧受検資格で受ける人へ』第二次検定対策は「お盆前」に終わらせる
(新受検資格で受けた人は1次試験合格後の実務経験が必要です。)
多くの受験生は勘違いしています。一次試験が終わってから二次試験対策を始めようと考えているのです。しかし現実は違います。一次試験終了後から二次試験までは驚くほど短期間です。
しかも秋は現場繁忙期です。その状態で経験記述をゼロから作るのは極めて困難です。一発合格者は、お盆前には経験記述のベースを完成させています。
特に新築工事を経験している人は有利です。なぜなら、試験で出題される内容の多くが、現場で日常的に管理している内容だからです。
コンクリート受入検査。鉄筋のかぶり厚さ。足場の壁つなぎ。工程管理。品質管理。安全管理。どれも現場で毎日見ているものです。
経験記述で評価されるのは、教科書の丸暗記ではありません。自分がどのような課題に直面し、どのように考え、どのように解決したかです。
だからこそ、過去の現場を振り返り、自分なりの管理事例を整理しておくことが重要です。
お盆前に骨格を作っておけば、秋以降はブラッシュアップに集中できます。これだけで合格率は大きく変わります。
ベテラン技術者は見逃し厳禁!令和10年度までの経過措置を活用する方法
ここからは、特に既に実務経験を積んでいる20代~50代の若手・中堅・ベテラン技術者の皆さんに向けた話です。
私は総務・人事として数多くの受験申込をサポートしてきましたが、毎年必ずいるのが、「そのうち受けようと思っていた」という方です。
しかし2024年の制度改正後、その「そのうち」が通用しなくなりました。現在は令和10年度(2028年度)まで経過措置期間となっています。
したがって、旧制度の受検資格を満たしている方は、経過措置期間中に第一次検定へ合格し、旧制度による第二次検定受検資格を確保しておくことが極めて重要です。
なぜなら、令和10年度までに経過措置の対象として第一次検定に合格しておくことで、旧制度に基づく第二次検定受検資格を確保できるため、その後も第二次検定への挑戦を継続できる仕組みとなっているからです。
一方で、令和10年度を過ぎると旧制度は終了します。これまでの実務経験だけで受検資格を得られる経過措置は使えなくなるため、今のうちに第一次検定へ合格しておくことが極めて重要です。 これまで積み上げてきた豊富な実務経験を最大限活用できる最後の期間と言っても過言ではありません。
特に、・現場所長 ・主任技術者 ・工事課長 ・工事部幹部候補といった立場の方は、今後のキャリア形成を考えても優先順位の高いテーマです。
「忙しいから来年」ではなく、「忙しい今だからこそ受ける」という発想に切り替えていただきたいと思います。
令和10年度はまだ先のように見えますが、第一次検定の準備期間や万一の不合格を考えると、実質的には令和9年度が勝負とも言えます。
若手技術者が制度改正を活かす方法
一方で高卒以上の新卒入社の方そして20代の若手技術者にとっては追い風です。
旧制度では、経験年数が足りない→受験できない→勉強する理由がない→資格はないが経験値があがる→仕事がわかる→だんだんと段取りがうまくできる→忙しくなる
そして経験年数が足りるころには、仕事の責任も重くなり、プライベートでは結婚やお子さんを授かったりでますます勉強時間がとれにくくなるという状態になりがちでした。
しかし現在は違います。試験実施年度に満19歳以上になる者であれば第一次検定を受験できます。つまり、一般的に高卒で施工管理職に就いた者も対象となったのです。
入社1年目→第一次検定合格→1級建築施工管理技士補取得→監理技術者補佐として実務経験を積むというルートが可能になりました。
これは非常に大きな変化です。会社側から見ても、技士補資格を持っている若手は、現場配置や教育投資の優先順位が上がる傾向があります。 将来の監理技術者候補として早くから期待されるのです。
上司も教え甲斐があるというものです。
資格手当、昇格、昇給、重要現場への配置などのチャンスも増えていきます。若いうちに第一次検定へ合格しておくことは、将来の自分への最高の投資になるのです。
本当に良い会社は「受験しろ」と言うだけではない
ここからは転職や就職を考えている方にも知っていただきたい内容です。
建築元請の建設業者によって受注現場の建物種類や規模はさまざまです。その内容で監理技術者がいないとできないのか、主任技術者でよいのか、に分かれます。それが社員への資格取得支援の根拠になります。
建設業法で「建設業者は、請け負った建設工事ごとに主任技術者を配置しなければならない。」と定められています。さらに「下請代金額の合計が8,000万円(建築一式・2026年6月現在)を超える場合は、特定建設業許可が必要となり、監理技術者を配置しなければならない。」となっています。
建築一式工事の監理技術者になるためには、一般的に1級建築施工管理技士や一級建築士などの国家資格が必要となります。
ですから、一般的な戸建住宅工事を手掛ける住宅メーカーでは、そもそも監理技術者が必要となる規模の工事はあまり多くないので現場監督として日常業務を行ううえでは、監理技術者が必要となる場面は比較的少ないと言えるでしょう。
また、「資格取得を推奨しています」と会社案内に書いていても、推奨はするが具体的には何も支援していない会社もあります。
受験料は自己負担。教材も自己負担。勉強時間への配慮なし。不合格なら自己責任。これでは合格率は上がりません。
本当に技術者を育てる会社は違います。
監理技術者を育てる会社の特徴① 受験申込から会社が関わる
優良企業ほど、「受験は本人任せ」にしません。総務や人事部門が中心となり、受験資格確認、必要書類準備、申込手続き、スケジュール管理までサポートします。
特に制度改正後は受検ルートが複雑になっています。受検資格の確認ミスは大きな損失になります。だからこそ会社が積極的に関与するのです。
監理技術者を育てる会社の特徴② お金だけでなく時間を支援する
私が見てきた合格率の高い企業には共通点があります。
それは、勉強時間にも会社が配慮していることです。例えば、・社内で行う模擬試験・資格学校との提携・勉強会・自習室開放・受験直前講習などです。
さらに本気の会社になると、業務時間中の学習時間を認めています。資格取得は個人の努力だけでは限界があります。会社が環境を整えた時に、初めて大きな成果につながります。
監理技術者を育てる会社の特徴③資格取得後の評価が明確
受かった後に何も変わらない会社では人は育ちません。優良企業では、資格手当、昇格要件、役職登用、現場配置などが明確になっています。
若手技術者はぜひ確認してください。「1級建築施工管理技士補、そして1級建築施工管理技士を取得した先に何があるのか」を会社が示しているかどうか。ここが重要です。
経審から優良地場ゼネコンを見抜く方法
就職・転職を考えている方にぜひ知っていただきたい視点があります。
それが建設業法で定められている経営事項審査(以下、経審)です。経審はインターネットで誰でもいつでも閲覧可能です。
特に建築一式工事の総合評定値(P点)や技術職員数を確認すると、その会社が技術者育成にどれだけ力を入れているかが見えてきます。
建築一式P点1000点台でも優良企業は数多く存在しますが、一般的には建築一式P点1100点台を超える企業になると、公共建築工事の受注実績や有資格技術者数が充実しているケースが増えてきます。
特に技術職員数のうち、1級建築施工管理技士や一級建築士が何人いるかを見ると、その会社が監理技術者をどれだけ育成しているかが見えてきます。
求人票は会社が作ります。しかし経審は第三者機関へ提出した客観的データです。だから私は、転職先や就職先を検討する際には、求人票より先に経審を確認することをおすすめしています。
10億円規模の公共建築も取り組む地域トップクラスの有力地場ゼネコンともなると、監理技術者が多い会社は、受注力、施工能力、教育体制が整っているケースが多くなります。
もちろん数字だけで全ては判断できません。
しかし、「監理技術者を何人育てているか」は会社の姿勢を知る有力なヒントになります。
転職先を選ぶ際には、給与だけでなく、「この会社で自分は監理技術者になれるのか」という視点も持っていただきたいと思います。
1級建築施工管理技士や一級建築士の資格を有する者が、監理技術者講習を修了し監理技術者資格者証の交付を受けると、監理技術者として配置することができます。
監理技術者としての経験値により、地域有力ゼネコンへの転職、現場所長への昇格、定年後の継続雇用など、働き方の選択肢が大きく広がります。
つまり監理技術者は、全国どこでも通用する国家資格であり、人手不足でますます高い需要があり、定年後も再雇用や転職先が見つかりやすく、公共建築・大型民間工事に携われる資格だとも言えます。
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1級建築施工管理技士に合格した後は、監理技術者として経験を積める会社を選ぶことが大切です。転職を考える前に、優良地場ゼネコンの見抜き方も知っておきましょう。

まとめ
2024年の制度改正によって、1級建築施工管理技士への道筋は大きく変わりました。
若手技術者にはチャンスが広がりました。ベテラン技術者には経過措置という期限が設けられました。
しかし、どちらにも共通していることがあります。それは、合格する人は特別な才能を持っているわけではないということです。
過去問から逆算する。スキマ時間を積み上げる。第二次検定を早めに準備する。そして資格取得を本気で支援してくれる会社の環境を活用する。これらを地道に積み重ねた人が合格しています。
監理技術者という資格は、単なる国家資格ではありません。あなた自身の市場価値を高め、働き方の選択肢を広げ、人生の可能性を大きく変えてくれる武器です。
令和10年度までの経過措置期間は、多くの技術者にとって重要な転換点になるでしょう。 ぜひこの機会を逃さず、未来の自分への投資として一歩を踏み出してください。数年後、現場を統括する監理技術者として活躍している未来は、今の一歩から始まります。
そして転職を考えている方は、求人票だけでなく経審を確認し、「監理技術者を継続的に育てている会社かどうか」という視点で企業研究をしてみてください。
資格は会社から与えられるものではありません。しかし、その資格を活かせる会社は選ぶことができます。制度改正という追い風を活かし、資格取得と会社選びの両面から、自分の将来を切り拓いていただければと思います。
まずは自分の受検資格を確認してください。それが監理技術者への第一歩です。
制度改正という大きな追い風を活かせるかどうかは、「いつか受ける」ではなく「今年動く」かどうかで決まります。令和10年度までの経過措置を活かせるベテラン技術者にとっても、早期に技士補を目指せる若手技術者にとっても、今は大きなチャンスの時代です。
1級建築施工管理技士は、単なる受験資格や肩書ではありません。現場所長への昇格。監理技術者としての活躍。地域有力ゼネコンへの転職。定年後も求められる技術者として働き続ける未来。そのすべてにつながる可能性を持った国家資格です。
数年後、公共建築や大型民間工事の現場を統括する監理技術者として活躍している自分を想像してみてください。その未来は、今日の一歩から始まります。


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