「現場監督って、どんな仕事ですか?」
私はこれまで20年以上、高校生や専門学校生のインターンシップ、そして若手社員の育成に携わってきました。
学校を訪問すると、先生方からよくこんな言葉をいただきます。
「うちの生徒は部活動で鍛えています。根性がありますので、よろしくお願いします。」
もちろん、根気強く努力する姿勢は大切です。
しかし、私はそのたびに思うのです。
建設業は、決して「根性だけ」の仕事ではありません。
現場監督とは、知識と技術、人への思いやり、そして責任感を持って、多くの人と力を合わせながら、一つの建物を完成へ導く仕事です。
私は、この仕事の本当の魅力を、一人でも多くの人に知ってほしいと思っています。
この記事で分かること
✓ 現場監督とはどんな仕事なのか
✓ 現場監督と主任技術者・監理技術者の関係
✓ なぜ国は施工管理技術検定制度を改正したのか
✓ 建設業の人材不足と担い手三法の関係
✓ 現場監督という仕事の魅力と将来性
現場監督(施工管理技術者)はオーケストラの指揮者
建設業許可のもとで行われる建設工事は、 決して一人では完遂できません。
住宅であっても、大工さんだけでなく多くの専門職が関わります。
学校や病院、庁舎、工場、大規模商業施設ともなれば、その1日当たりの人数は何十人、何百人になることもあります。
設計者
職人さん
専門工事会社
資材メーカー
発注者
行政
そして忘れてはならないのが、
近隣にお住まいの皆さまです。
工事中は、騒音や振動、埃などをゼロにすることはできませんが、できるだけ影響が小さくすむようにしなければなりません。
現場監督は、その中心で全体をまとめる存在です。
私はいつも、
「現場監督はオーケストラの指揮者」
だと思っています。
指揮者は演奏するわけではありません。
演奏するのは、それぞれの楽器を極めた演奏家です。
現場監督も同じです。
職人さんに命令する人ではありません。
一人ひとりの技術を尊重し、
互いを信頼し、
コミュニケーションを最適化しながら、
全員の力を一つにまとめるリーダーなのです。
現場監督(施工管理)の仕事は「無」から「有」を生み出す仕事
何もなかった土地。
そこに一本一本の鉄筋が組まれ、
コンクリートが打設され、
鉄骨が建ち、
壁ができ、
配管、配線などの設備が入り、
建物が完成していきます。
建設業とは、
「無から有を生み出す仕事」
です。
そして、そのプロジェクトの中心には必ず現場監督、あるいは現場監督チームがいます。
現場監督の仕事は、自分一人では完結できません。
多くのプロフェッショナルの力を最大限に引き出し、一つの目標へ導くことです。
建物は、一人の力では生まれません。
人と人との信頼が積み重なって、初めて完成します。
現場監督の仕事は建物が完成して終わりではない
現場監督の仕事は、
形に残る仕事です。
しかし、本当の完成は建物が出来上がった瞬間ではありません。
お客様へ引き渡されたその日。
私は、その瞬間こそ建物の「デビュー」だと思っています。
学校なら、子どもたちが学び始めます。
病院なら、多くの命を支え始めます。
工場なら、地域の産業を支えます。
住宅なら、新しい家族の暮らしが始まります。
建物は社会へ送り出されてから、何十年にもわたり人々の生活を支えていきます。
建物は、その日から地域の一員になります。
人々に使われ、
愛され、
時には子どもたちの思い出となり、
地域の歴史の一部になっていくのです。
より便利に。
より快適に。
より安全に。
その未来の始まりをつくることができる。
それが現場監督という仕事です。
現場監督は子どもに誇れる仕事
現場監督という仕事は、
街づくりの仕事です。
休日、家族で街を歩いているとき、
「あの学校は、お父さん(お母さん)が携わったんだよ。」
「あの病院もそうなんだ。」
「あの橋もそうなんだよ。」
そんなふうに子どもへ話せる仕事は、決して多くありません。
「すごいね。」
そう言ってもらえた瞬間。
その喜びは、お金では買えません。
そして子どもが、
「私もやってみたい。」
そう思ってくれたなら、それは建物以上に価値のあるものかもしれません。
現場監督はAIには代替しきれない仕事
AIは急速に進歩しています。
図面を解析し、
工程を予測し、
資料を作成することもできるようになりました。
しかし、
現場で職人さんの表情を見ながら判断すること。
天候の変化を読み取ること。
発注者の想いを理解すること。
近隣の皆さまへ配慮すること。
予定どおりに進まない現場で最善の答えを導くこと。
そして、多くの人との信頼関係を築くこと。
これらは、人だからこそできる仕事です。
AIが進化する時代だからこそ、人と人をつなぐ現場監督の価値は、ますます高まっていくでしょう。
現場監督は一生、完成しない仕事
現場監督という仕事には、
「これで十分」
というゴールがありません。
新しい工法。
新しい材料。
新しい法律。
新しい技術。
新しい課題。
そして新しい監督同士のチームや新しい職人さんとのコラボレーション。
毎回違う現場で、毎回最適な答えを探します。
「石の上にも三年」という言葉があります。
しかし、現場監督は三年で完成する仕事ではありません。
五年経っても。
十年経っても。
三十年経っても。
学び続ける仕事です。
右も左も分からない新人の頃から「監督」と呼ばれ、その呼び名に応えようと努力を重ねます。
体力も必要です。
知識も必要です。
判断力も必要です。
忍耐力も必要です。
そして国家資格も必要になります。
決して簡単な仕事ではありません。
それでも、多くの人の力を結集し、世界に一つしかない建物を社会へ送り出し、人々に喜ばれ、感謝される。
そして最後に待っているのは、
完成した建物ではありません。
ともに汗を流し、
悩み、
笑い、
励まし合ってきた職人さんたちと
「完成したな。」
と笑顔で握手を交わせる瞬間です。
その達成感は、一人では決して味わえません。
だから現場監督は、
建物だけではなく、
人との絆もつくる仕事なのです。
これほど奥深く、これほど誇りを持てる仕事を、私は他に知りません。
なぜ国は制度を変えたのか
ここまで読んでいただいた皆さんなら、もうお気づきかもしれません。
現場監督は、日本の社会を支える極めて重要な仕事です。
だからこそ国は、人材不足が深刻化する中で、建築士制度や施工管理技術検定制度を見直しました。
令和2年、令和3年、そして令和6年。
若い世代が挑戦しやすくなり、成長しやすくなるよう制度は大きく変わりました。
制度改正の目的は、試験を簡単にすることではありません。
未来の主任技術者、そして監理技術者を育てること。
それこそが制度改正の本当の目的なのです。
だから私は、
制度だけではなく、
現場監督という仕事そのものの魅力を伝えていきたいと思っています。
このシリーズでは、制度改正の内容だけでなく、その背景や考え方、そして現場監督として成長していく道筋を、一つひとつ分かりやすく解説していきます。
おわりに
私はこれまで20年以上、高校生や専門学校生、若手社員の育成に携わってきました。
その中で強く感じてきたことがあります。
建設業は決して「根性だけ」の仕事ではありません。
一人ひとりの専門職を尊重し、信頼関係を築き、多くの人の力を一つにまとめ、地域の未来を形にしていく仕事です。
そして完成した建物は、社会へ「デビュー」し、人々の暮らしを支え続けます。
私は、このブログを通じて、一人でも多くの人に現場監督という仕事の本当の魅力を知っていただきたいと思っています。
そして将来、一人でも多くの皆さんが主任技術者、そして監理技術者として責任あるリーダーへ成長し、日本の建設業と地域社会を支える存在になってくださることを心から願っています。
このブログが、あなたの「現場監督になりたい」という夢を、「主任技術者・監理技術者として社会を支える使命」へとつなぐ、小さな道しるべになれば幸いです。
次回予告
次回は
「現場監督とは?法律には存在しないって本当?」
をテーマに、
「現場監督」と「主任技術者」の違い、
そして建設業法で定められている技術者制度について分かりやすく解説します。
このシリーズを読む
現場監督という仕事から、主任技術者・監理技術者への成長までを、順を追って学べるシリーズです。
📖 第1回(現在の記事)
現場監督になりたい人が最初に知るべきこと
🚧 第2回(近日公開)
現場監督と施工管理の違いとは?法律には「現場監督」は存在しないって本当?
🚧 第3回(近日公開)
主任技術者とは?
🚧 第4回(近日公開)
監理技術者とは?
🚧 第5回(近日公開)
なぜ国は制度を改正したのか?
